研究概要

RESEARCH

PNIPAMゲルの共貧溶媒性

本研究室では,水中におけるPNIPAM架橋ゲルの高温凝縮型の体積相転移を水和の協同性という観点から研究してきました.一方,PNIPAM架橋ゲルは温度だけでなく溶媒組成にも敏感に応答し,水/メタノール混合溶媒中において再帰的体積相転移を示します.このように良溶媒を混合すると貧溶媒になる現象は共貧溶媒性と呼ばれています.この分子機構を解明するため,協同的水和とPNIPAM鎖への水素結合によるメタノール吸着の競合機構を考慮して会合溶液理論をもとに理論モデルを構築し,実験結果を説明することに成功しました.再帰的転移は水/テトラヒドロフラン,水/ジメチルスルホキシドなどの混合溶媒中においても確認されているので,これらの統一的理解を目指して,溶媒間会合などを考慮した理論を構築し,研究を行っています.

図2
図2:水/メタノール混合溶媒中におけるPNIPAM架橋ゲルの膨潤曲線の理論計算と実験データ(S. Hirotsu, J. Chem. Phys., 1988, 88, 427)の比較.水-高分子,メタノール-高分子間の競合的水素結合を考慮した理論計算による膨潤比を線で,実験データを記号で示した.異なる3つの温度における膨潤比を重ねてプロットした.(H. Kojima and F. Tanaka, Soft Matter, 2012, 8, 3010-3020)